障害者と失業給付
失業給付というセーフティーネット
勤務先で雇用保険に加入していれば、離職・失業した際に、雇用保険から失業給付を受けることができます。あまり知られていないかもしれませんが、失業給付では健常者と障害者で差が設けられています。障害者が離職して失業給付を受給する場合、給付制限や条件は健常者よりも緩やかで、受給期間も健常者より長く設定されています。要するに障害者は優遇されているのですが、どうもこの制度はあまり知られていないようです。
私のような精神障害者の場合、いつ障害の状態が悪化して働けなくなるのか分かりませんし、一度体調を崩してしまうといつ回復するのか予測できません。そのため、働けなくなった時のセーフティーネットとして手厚い失業給付を受けられることには非常に感謝していますし、最大限活用したいと思っています。
私の失業歴
参考までに、私の失業歴を紹介します。私は双極性障害(躁うつ病)が原因で、過去に2回失業して、失業給付を2回受給しています。1回目と2回目の状況は以下のとおりです。
1回目: 20代後半、一般雇用・クローズ就労、手帳なし、自己都合退職(正当な理由なし)
2回目: 30代前半、一般雇用・クローズ就労、手帳あり、自己都合退職(正当な理由あり)
障害者手帳が必要
障害者として失業給付の制度を活用する場合、大前提として障害者手帳が必要になります。私の場合、1回目も2回目も双極性障害の悪化による離職という点では変わりなかったのですが、1回目は手帳を持っていなかったため、優遇措置は受けられませんでした。障害者手帳を持っていない場合、医師の診断書で代用できるケースもあるようですが、できないケースもあるようです。よって、障害者手帳を取得しておくのが一番確実だと思います。
障害者手帳を取得するメリットについては、過去の記事にも書きました。今回の記事では、特に失業給付について、障害者手帳を取得するメリットについて紹介します。主に個人の体験をベースに書いているので、あくまで参考程度にご覧ください。また、失業給付の可否、具体的な受給期間や金額は、雇用保険の加入期間などによって異なります。具体的なことはハロワで聞いてみてください。
失業給付における一般の離職者と障害者の違い
待機期間について
失業給付の申請をしてから7日間は、給付を受けることができません。この期間のことを「待機期間」といいます。待機期間については、一般の離職者と障害者とで違いはありません。
給付制限期間について
一般の離職者の場合
通常、被雇用者の都合(転職、家庭の事情、その他一身上の都合)で退職する場合には、「正当な理由のない自己都合による離職」となります。「正当な理由のない自己都合退職」の場合、失業給付を受給するにあたっては2〜3ヶ月間の「給付制限期間」があり、この間は失業給付が支給されません。
私が初めて失業給付を受給しようとした時には、「3ヶ月経たないと貰えない」と知って愕然としました。まあさっさと次の仕事を見つけろということなんでしょうけど、再就職するまでの収入が無くなるのは非常に困りますよね。
障害者の場合
障害者の場合であっても、原則として2〜3ヶ月の受給制限期間があります。ただし、精神障害・精神疾患が悪化したことなどが原因で離職した場合、同じ自己都合退職でも「正当な理由がある」ものとされ、「特定理由離職者」というものに該当することがあります。「特定理由離職者」に該当すると、受給制限期間が無くなり、2〜3ヶ月待たなくとも失業給付を受給できるようになります。
離職理由については、まず雇用者が決めて、その旨が離職票に記載されます。よって雇用者側が「正当な理由のない自己都合退職である」と離職票に記載した場合、一旦はそういうことになります。もっとも、ハローワークは雇用者側からの申告だけで離職理由を判断するわけではありません。
たとえ雇用者側が「正当な理由のない自己都合退職である」だと申告していた場合も、離職者からハロワの担当者に対して「障害の悪化が原因で退職せざるをえなくなった」と説明すれば、「退職にあたって正当な理由があり、特定理由離職者に該当する」と判断されるケースがあります。そして、障害者手帳を持っている場合、大体は「正当な理由がある」と判断してもらえるように思います。
どういった条件のもとで「特定理由離職者」に該当するのかはよく分からないのですが、私の時は障害者手帳を提示しただけで、そうしてもらえました。
受給期間について
一般の離職者
一般の離職者で、雇用保険の被保険者であった期間が10年未満の場合、失業給付の受給期間は90日となります。たとえば仮に基本手当日額を5,500円とした場合、受給総額は5,500円×90日=495,000円となります。
障害者の場合
障害者の場合、雇用保険の被保険者であった期間が1年以上あれば、失業給付の受給期間は300日となります。基本日額が5,500円とした場合、受給総額は5,500円×300日=1,650,000円となります。これは受給期間・受給総額について一般の離職者と比べて3倍以上と、とんでもない差があります。このことだけでも、障害者手帳を持っておく意義があると言って良いでしょう。
求職活動について
失業給付を受給するにあたっては、受給期間中に求職活動をする必要があります。求職活動についても、一般の離職者と障害者とでは差があります。
一般の離職者の場合
一般の離職者は、前回の認定日から次回の認定日の間に、2〜3回の求職活動をする必要があります。一般の離職者の場合の求職活動は、ハローワークの窓口での相談や、企業へ履歴書を送付する、面接を受けるなど、それなりに具体的な活動であることが求められます。「ネットで求人票を閲覧した」「ハロワの掲示板を見た」とかだと有効な求職活動とは認められないことがあるため、注意が必要です。
障害者の場合
障害者だと、求職活動の要件はかなり緩和されていて、前回の認定日から次回の認定日の間に1回求職活動をすればいいことになっています。認定日にはハロワの窓口で就職相談を受けるのですが、これも求職活動とカウントされるため、実質的には認定日にハロワに行くだけでいいということになります。
失業給付において障害者手帳を取得するメリット
失業給付を受けるにあたって障害者手帳を取得しておくメリットは、以下の2点です。
給付制限期間が無くなる(すぐに失業給付が貰える)
私のような精神障害者の場合、常に「症状が悪化して働けなくなるリスク」に晒されています。働けなくなることで一番困るのは、お金が無くなることです。資本主義社会では、お金が無ければ生きていけませんからね。
失業給付の待機期間も困ります。いくら失業給付を受けられるといっても、受給制限期間がある場合、2〜3ヶ月間は無収入になります。その間貯金がジリジリと目減りしていくのを眺めると、精神症状が悪化しかねません。そのため、すぐに失業給付を貰えるのは非常に助かります。
受給期間がメチャクチャ長くなる(90日→300日)
基本手当日額が5,500円である場合、一般の離職者の受給総額は495,000円であるのに対して、障害者の受給総額1,650,000円と、大きな差があります。
精神障害の場合、いつ症状が回復するか分からないのが大きな悩みです。回復には長い期間を要することも多いですから、長期間にわたって失業給付を受給することができるのはとてもありがたいことです。
障害者手帳を取得しましょう
繰り返しになりますが、障害者手帳を持っていないと、失業給付における障害者のメリットを享受することができません。手帳を取得することのデメリットはほとんどありませんので、とりあえず取得することをおすすめします。
(障害者手帳を取得することのデメリットについては、こちらの記事もご覧ください)
障害者に限った話ではありませんが、お金は生命線です。ましてや私たち障害者は、健常者と比べて稼得能力が低い場合が多いのです。そのため、いざという時にご自身やご家族の生活を守るためにも、障害者手帳を取得しておくことをおすすめします。
本記事は主に以下のサイトを参照して書きました。正確な情報を知りたい方はあわせてご覧ください。
ハローワーク よくあるご質問(雇用保険について)