障害者手帳を取得するデメリットはあるのか?
前回の記事では、「障害者手帳を取得することで様々な福祉サービスを利用することができるようになる」ということを書きました。障害者手帳は本当にいろんな場面で活用することができ、取得するメリットを挙げ出すとキリがありません。はっきり言っていい事尽くしです。
ただ、美味い話には裏があるよね、なんか大きなデメリットもあるんじゃないのと心配して、障害者手帳の取得をためらっている人もいるかもしれません。
今回は、障害者手帳を取得することのデメリットについて、実体験に基づき書いていきます。
デメリットは無い
結論から言うと、障害者手帳を取得するデメリットはほとんどありません。取れるならさっさと取ったほうがいいです。
とはいえ、実際に取得することに抵抗を感じる方も多いと思います。私の場合、以下のような不安から、障害者手帳の取得をためらっていました。
障害者だとバレるのが怖い
障害者手帳を取得する以前、私は、双極性障害の治療で心療内科へ通院しており、薬物療法を続けながら、会社勤めをしていました。
いわゆる「クローズ就労」という状態で、双極性障害を患っていることも、心療内科へ通院していることも、現在進行形で薬物療法を続けていることも、すべて会社や同僚には隠していました。
そんな中、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の存在を知って、取得するかどうかについて調べたり考えたりしたとき、最大の懸念だったのが、「障害者であることが周りにバレる」ことでした。
障害者手帳を取得しない限り、私は「(狭い意味での)障害者」ではありません。何の隠し立ても無く「私は障害者ではありません」と断言できます。就労や雇用を制限される理由はありませんし、周りから「配慮」されることもありません。
障害者手帳を取得した場合、私は「(狭い意味での)障害者」になります。自分の障害については、自分が黙っていれば周りにはバレません。しかし、障害者手帳を取得すると、何かのきっかけで手帳を所持していることがバレる可能性が生まれます。そうして自分が障害者である事実を周囲に知られることで、自分にとって不本意な「配慮」をされることを恐れていました。
バレることはありません
そんなこんなで取得をためらい、何年かして体調を崩して会社を退職し、ようやく障害者手帳を取得する踏ん切りがつきました。取得の方法については改めて書こうと思いますが、申請書と診断書を市区町村役場に提出するだけなので簡単です。
手元に届いた障害者手帳を見て、「これで私も障害者かあ……」とちょっとおセンチな気持ちになりつつ、また相変わらず障害者バレを心配しつつ、試しにいくつかの福祉サービスを利用してみました。
結論から言えば、障害者手帳を取得したからと言って、障害者であることがバレることはほぼありませんでした。
まず、障害者手帳を取得したという事実は、自分にしか分かりません。厳密に言えば役所の人はご存知なんでしょうけど、職業倫理があるでしょうから、役所の人からバレることはほぼ有り得ません。
福祉サービスを利用するためには、障害者手帳を提示する必要がありますが、大体はチラッと見せる程度、確認は極々短時間で終わります。余程注意深く観察していないと、「アイツは障害者手帳を提示している」とは分からないでしょう。
また、障害者手帳を使用しない時は、家の机の引き出しの奥の方にでも仕舞っておくと安全です。自分の障害者手帳のことを知っているのは自分だけ、他人には見られなければバレません。
絶対にバレないんですか?
障害者手帳を取得したからと言って、障害者であることがバレることはほぼありません。しかしながら、絶対にバレないとは断言できません。手帳を物理的に所持し、使用する以上、バレる可能性はあります。
障害者手帳を提示した相手が友人・知人だった
役所や映画館などの窓口で障害者手帳を提示した相手が友人・知人だった場合、不可抗力的にバレます。これはどうしようもありません。滅多に無いことだとは思いますが、一度だけありました。
障害者手帳を見られた
障害者手帳を活用するためには、障害者手帳を携帯しておく必要がありますが、うっかりカバンのチャックを閉め忘れて、中に入れておいた手帳を見られてしまった場合にも、必然的にバレます。
少し見られただけでは、それが障害者手帳であるとは気づかれないでしょう。しかし、障害者手帳はワリと分かりやすい見た目(自治体によって違いますが、青や緑のビニールケースに入っていることが多いです)をしていますので、分かる人だと一見しただけで分かってしまいます。
障害者手帳を紛失した
最も注意しなければならないのが、紛失です。障害者手帳は身分証でもありますので、中には氏名・住所・生年月日・顔写真といった、個人を容易に特定できる情報が記載されています。つまり、落として拾われたりしたらバレます。
障害者手帳は、非常に大切で、非常にセンシティブな書類なので、くれぐれも紛失しないようにしてください。悪用されるリスクもありますので、紛失したらすぐに警察へ届け出ましょう。
バレる以外のデメリットは?
ありません。
細々とした話をすると、障害者手帳を取得するために申請書を書かなければならないこと、申請のために医師の診断書が必要であること、診断書を書いてもらうのに5,000円程度の費用がかかることなどがあります。
厚生労働省・みんなのメンタルヘルス「精神障害者保健福祉手帳」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/certificate.html
これらはすべてちょっとした手間の話で、障害者手帳から得られる多くのメリットと比較すれば、大したことではありません。
また、「バレる」ことがデメリットとなりうるのはクローズ就労の場合のみであり、オープン就労・障害者雇用の場合には、何のデメリットも無い、メリットしかないと断言してもいいと思います。特に、障害者雇用を検討している場合は、障害者手帳を所持していないとそもそも話になりません。
障害者手帳を取得しましょう
障害者手帳を取得・所持することのデメリットは、障害者であることが周りにバレる可能性がある、この一点だけです。バレることについても、それほど気にする必要はありません。また、バレるというデメリットと、障害者手帳を取得するメリットを秤にかけたら、メリットの方が圧倒的に大きいでしょう。
うつ病や双極性障害、統合失調症や発達障害などの診断を受けて、障害者手帳を取得することができる状態になった場合は、とりあえず早めに取得しておくことをオススメします。
障害者手帳、普段はそれほど役には立ちませんし、ぶっちゃけ取得する意義が分からないという方もいるかと思います。しかし、何はともあれ早めに取得しておくことをオススメします。
なぜ早めに取得しておくことをオススメするのか。障害者手帳は、私たち精神障害者が窮地に陥って、生活に苦しんでいる時にその真価を発揮するからです。そして、窮地に陥ってから障害者手帳を取得したのでは、手遅れになる場合があるからです。
私たち精神障害者は、その障害によって生活が破綻するリスクを、常に抱えています。健康な人と比べると、福祉サービスを利用する蓋然性が高いわけです。
障害者手帳は、障害者福祉のパスポートのようなもので、所持していなければ福祉サービスを利用することができません。いつ生活が破綻するか分からない、その「いつか」に備えて、早めに障害者手帳を取得しておくことを強くオススメします。