障害年金の受給には要件がある
前回の記事では、障害年金の請求はほとんど誰でもできることを紹介しました。
請求自体は誰でもできますが、実際に受給できるかどうかはまた別の問題です。
障害年金を受給するにあたっては、まず障害年金を受給するためには、大きく3つの要件を満たす必要があります。
今回は、障害年金を受給するための要件について紹介します。
なお今回も、私個人の体験に基づく主観的な記事であることに留意してください。
(私は精神障害での請求しか経験が無いため、身体障害については分かりません。)
実際に請求を行う際には、ご自分で年金事務所に問い合わせ、社労士等の専門家に相談したりすることをおすすめします。
また、以下の資料が非常に分かりやすいため、よければ初めにご参照ください。
日本年金機構「障害年金ガイド」
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf障害年金の請求におけるキーワード
受給の要件を紹介する前に、要件の中に出てくるキーワードをいくつか紹介します。
これらのキーワードは、障害年金の請求を検討する上で非常に重要な意味を持ちます。
他方で表現がややこしく意味が分かりにくく解釈しづらいため、つまづきやすいポイントの一つです。
できるだけ本来の意味を損なわないよう、なるべく分かりやすく紹介します。
初診日
「初診日」について、日本年金機構のウェブサイトにおいて以下のように説明されています。
障害または死亡の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日をいいます。同一の病気やけがで転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日となります。
初診日とは、端的に言えば、現在の病気・障害で初めて病院にかかってお医者さんの診察を受けた日のことです。
精神障害・精神疾患の場合、途中で傷病名が変わることがよくあるため、この「初めて医師等の診療を受けた日」がいつになるのかが問題となります。
例えば、最初の診断名は抑うつ症状だったのが途中から双極性障害と診断された場合、最初の診断名は適応障害だったのが途中からうつ病と診断された場合です。
途中で診断名が変わった場合でも、原則は初めて病院を受診した日(上の例で言えば、それぞれ抑うつ状態・適応障害の診断を受けた病院にかかった日)が初診日になるため、注意が必要です。
障害認定日
「障害認定日」について、日本年金機構のウェブサイトにおいて以下のように説明されています。
障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を過ぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日をいいます。
これはややこしいので敢えて詳しく説明しませんが、精神疾患・精神障害の場合、基本的には初診日から1年6ヶ月を過ぎた日が障害認定日となると思ってもらえれば大丈夫です。
障害の状態
「障害の状態」とは、障害年金を請求しようとしている人が、精神疾患・精神障害によってどのような状態になっているのかということ、端的に言えば、障害の程度を意味します。
障害年金の対象となる「障害の状態」については、以下のように定められています。
日本年金機構「障害等級表」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/tokyuhyo.html(この等級表では精神障害についての基準があまりにもフワッとし過ぎているため、この点はまた追って書きます。)
障害年金を受給するには、「障害の状態」がいずれかの等級に当てはまる必要があります。
障害年金受給の三要件その1「初診日要件」
障害年金の請求を行うにあたって、まず初診日を確定させ証明することが必要となります。
理由として、初診日が障害認定日の起算点になること、保険料納付の条件も初診日を基準に判断されること、初診日に加入していた年金制度が国民年金か厚生年金かによって年金の等級や額が変わることが挙げられます。
通常、初診日は初めてかかった病院から「受診状況等証明書」という書類を発行してもらうことで証明できます。
ただ、初めて病院にかかった時から長い期間が過ぎていてカルテが残っていない場合や、そもそも病院が閉院していた場合、受診状況等証明書を入手することは困難になります。
この場合、他の手段を検討することになります。
障害年金受給の三要件その2「障害認定日要件」
障害年金を受給するためには、障害認定日において、障害等級表に定められた障害の状態である必要があります。
初診日に加入していた年金制度が国民年金の場合は1級と2級、厚生年金の場合は1級と2級と3級が定められています。
障害認定日において所定の障害の状態であった場合、障害年金を請求することができます。
障害認定日を過ぎてから障害年金を請求する場合には、障害認定日まで遡って請求することもできます(これを「遡及請求」と言います。遡及請求には時効があるため、遡って請求できるのは過去5年分までです。)
障害認定日においては所定の障害の状態に当てはまらなかった場合でも、その後状態が悪化した場合は、障害年金を請求することができます(これを「事後重症請求」と言います)。
障害年金受給の三要件その3「保険料納付要件」
障害年金は年金保険制度からの受給ですので、保険料の未納がある場合には障害年金を受給できない可能性があります。
保険料納付要件については、大きく分けて以下の2つの基準があります。
基本的な基準
初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることが必要です。 https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
例えば、令和元年5月1日に20歳になり(=公的年金に加入し)、初診日が令和4年2月1日、障害認定日が令和5年8月1日であるケースを考えてみましょう。
この場合、保険料納付要件の対象となる期間は、令和元年5月~令和4年1月の33ヶ月です。
この33ヶ月のうち2/3の期間、22ヶ月以上保険料を納付していればOKということになります。
ちなみに、年金事務所等で保険料納付免除の手続きをして認められた場合、保険料を支払わなくても未納にはならず、納付済の期間としてカウントされます。
反対に、特に手続きをせず単に保険料を支払わなかった場合、その期間は未納期間となります。
精神疾患や精神障害で保険料を支払うことが難しい時でも、免除の手続きは忘れずに行うことをおすすめします(しんどいですが……)
特例による基準
初診日が令和8年3月末日までにあるときは、次のすべての条件に該当すれば、 納付要件を満たすものとされています。 ・初診日において65歳未満であること ・初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの直近1年間に保険 料の未納期間がないこと https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-2.pdf
先の例では、初診日が令和4年2月1日でした。
この場合、保険料納付要件の対象となる期間は令和3年1月~令和3年12月となり、この間に未納がなければOKということになります。
こちらの基準でも、保険料納付免除の手続きをした期間は納付済として扱われます。
見かけほど難しくはない
以上3つの要件をクリアすれば、障害年金を受給することが出来る可能性が見えてきます。
ややこしい用語や煙に巻くような表現が多く、色々と難しいように見えるかもしれませんが、実際の手続きに落とし込んでみると案外そうでもありません。
要するに役所での手続きですので、書類を書いて、揃えて、提出するだけです。
どの書類に記入すればいいのか、どのように記入すればいいのかなどについても、年金事務所などで教えてもらえる場合があります。
後日、具体的な手続きについても紹介したいと思います。
参考
日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html