精神障害とお金の悩み
精神障害と失職、そして障害年金受給
うつ病や双極性障害、統合失調症などの精神疾患・精神障害になると、かなり多くの人が「お金の悩み」を持つようになるんじゃないかと思います。精神疾患・精神障害になると、それまでのように働くことができなくなって収入が減少してしまったり、離職せざるを得なくなり収入が無くなってしまうこともあるからです。
私は、10年ほど前に双極性障害を発症しました。それまでは会社に勤めていたのですが、双極性障害の症状によって勤務が困難になり、やむを得ず退職しました。退職してからも体調は安定せず、再就職の目処も立たず、しかし生きていくにはお金が必要で、日に日に減っていく預金残高を見ながら、強い不安を感じていました。
いよいよお金が尽きそうになったころ、たまたま障害年金のことを知って、藁にもすがる思いで請求の申請をしたところ、年金の受給が認められました。
私の場合はですが、障害年金だけで生活していくことは不可能だと言わざるを得ません。結局他にも生計の術を探さなければならない日々、今でもお金のことには頭を悩ませています。それでも、決まった額のお金を定期的に振り込んでもらうことで、生活はかなり安定しました。
いまいちマイナーな障害年金
障害を持つ人にとって、障害年金の制度は非常にありがたいものです。私はすごく助けられています。また、障害を持つ人であれば誰でも、障害年金の制度を利用することができます。すべての障害者のために、制度の間口は開かれているのです。
反面、制度自体の知名度が低いことや、制度の内容がよく分からないこと、請求の方法がややこしいことなどから、障害年金の制度は十分に活用されていないとも思います。
この記事では、「そもそも障害年金とはなんなのか」について書いていきます。本項は、あくまで障害年金制度の概説です。「どうすれば貰えるのか」とか「申請のコツは」とか、そういう具体的なことは一切書いてありません。
詳しい内容や申請方法については、長くなるので後日改めて書きます。必ず書きますが、お急ぎの人は日本年金機構のウェブサイトなどを参照してください。
日本年金機構「障害年金の制度」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/index.html
障害年金の制度について
そもそも年金ってなに?
障害年金の話に入る前に、まず「年金とはなにか」について述べます。年金とはなにか、広い意味で言えば「定期的に給付される金銭」のことを指します。
しかし、これでは意味するものがあまりにも抽象的過ぎて、いまいちピンときません。たとえばアメリカでは「退役した軍人」や「元大統領」に対して、毎年定額のお金、つまり年金が支給されます。これらも確かに同じ「年金」なのですが、今から説明したい「日本の障害年金」とは、あまりにも性格が違います。
日本の年金制度
もっと具体的に、「日本の年金制度」について考えてみましょう。日本にも様々な年金がありますが、私たちの生活に最も関わりが深いのは、やはり公的年金(国民年金・厚生年金)でしょう。障害年金も、公的年金の中から給付される年金のひとつです。
公的年金は、社会保険制度のひとつとして、厚生労働省が所管する行政機関である日本年金機構によって運用されています。日本で「年金」と言えば、この公的年金のことを意味することが多いかと思います。
日本の公的年金は、強制加入の「国民皆年金」です。20歳になると、誰でも必ず公的年金に加入することになります(と言うか、加入しなければなりません)。
公的年金はなんのためにあるのか?
先に書いたように、公的年金は社会保険制度のひとつです。社会保険制度とは、高齢化や死亡、病気や障害、失業や介護など、人が生きていくうえで必ず直面するリスクに対して、社会全体で負担を分け合って備えていこうという制度です。
たとえば、障害年金について考えてみましょう。日常生活において、なんらかの障害を負うリスクは、それほど高くはありません。多くの人は、多少の病気はするとしても、障害を負うことはなく、無事に生きていくことができるのだと思います。
しかし、高くない確率ではありますが、誰にでも、ある日いきなり障害を負う可能性があります。いつ、誰が障害を負うのか、予測することはできません。そして、皆さん、まさか自分が障害者になるだなんて思いもしないでしょう。
私も、まさか自分が障害者になるだなんて思ってもいませんでしたが、そうなりました。この記事を読んでいる健康なあなたにも、明日いきなり障害を負う可能性があります。
障害を負うと、仕事にせよ家庭にせよ、それまで通りの生活を続けていくことが不可能になることがありますし、場合によっては人生が(主に悪い方に)激変してしまうことも有り得ます。しかし、皆さん、まさか自分が障害者になるだなんて思いもしないでしょうから、障害を負うリスクに対して予め備えるのは困難です。
話が長くなりましたが、たとえば障害のような、確率は高くない・予測できない・社会生活への影響が大きなリスクに対して、皆で少しずつ負担し合って備えようねというのが、社会保険制度たる公的年金の意義です。日本の公的年金制度は、ひとえに加入者の生活を安定させること、国民全体の福祉を向上させるために運用されています。
「皆で負担を分け合って、皆のリスクに備えよう」というスキームを、一般的に「保険」と呼びます。日本の公的年金も、皆(加入者ひとりひとりの他、企業や国など)で負担を分け合って、皆(加入者ひとりひとり)のリスクに備える形ですので、年金保険と呼ばれます。
障害年金は公的年金のひとつ
公的年金の性格については、以上に書いた通りです。福祉政策としての面を強く持つ、公共性の高い制度だと言えます。「国民皆年金」ですので、20歳以上の人は必ず公的年金に加入しなければなりません(つまり、20歳以上なら必ずなんらかの公的年金に加入しているはずだと言えます)。
公的年金の年金給付には、大きく分けて老齢年金・遺族年金・障害年金の3つがあります。
加入者が年をとって収入が減少した場合、収入を補うために支給されるのが、老齢年金です。
加入者が死亡した場合、残された家族の生活を安定させるために支給されるのが、遺族年金です。
そして、加入者が病気や怪我など所定の障害を負って、仕事や生活に制限を受けるようになった場合に支給されるのが、障害年金です。
障害年金を受給できる人とは?
障害を負った人なら誰でも受給できる可能性はある
「日本は国民皆年金の国である」と書いたとおり、日本の公的年金制度は強制加入です。日本国籍の人はもちろんのこと、日本に在住している外国籍の人も、公的年金に加入しなければなりません。公的年金に加入しているかどうかは、年金手帳を持っているかどうかで分かります。
つまり、年齢が20歳を超えていて、有効な年金手帳を持っていれば、誰でも、必ず、公的年金に加入していると言えます。
また、障害年金は、その名の通り障害を負った人に対して支給される年金です。対象となる障害は法令で定められています。
日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html
これらの障害を負ったときには、公的年金に加入していれば、誰でも障害年金を請求することができます。
よって、日本に住んでいて、所定の障害を負った20歳以上の人なら、ほぼ誰でも障害年金を受給することができる可能性があります(例外はあります)。
障害年金の受給には条件と審査がある
20歳以上の人は、基本的に必ず公的年金に加入しています。なので、所定の障害を負った際には、誰でも障害年金を請求する資格がありますし、誰でも受給することができる可能性はあります。
ただし、障害年金には受給要件が定められており、これらの条件を満たさないと、障害年金を受給することはできません。
また、障害年金の請求をすると、請求先の日本年金機構で審査が行われ、そこで年金を支給するか否かが決定されます(日本年金機構は「審査」という言葉を用いていないようですが、実際は完全に審査です)。審査の結果「不支給」と決定されることもあり、請求すれば必ずもらえるわけではありません。
ただ、何度も申し上げた通り、障害を負った20歳以上の人であれば、ほぼ誰でも障害年金の請求をすることができます。そして、請求をすることができるということは、誰でも受給することができる可能性があります(これは本当に大事なことなので、何度でも言います)。
長くなってしまったので、このあたりで一度区切ります。受給要件や審査についても、また別の記事に書きます。