貧乏人のための保険入門

Posted:

Modified:

お金

X B! L

貧乏人にこそ保険が必要

みなさんは「保険」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。生命保険、自動車保険、医療保険、ガン保険……世の中には様々な保険があります。

保険に加入すると、当然ながら保険料の支払いが必要になります。「収入が少ない」「所得が低い」等の理由から保険料の支払いを惜しむがために、保険に加入していないという人は少なくないのではないでしょうか。しかし、低賃金・低所得の人ほど、保険に入る必要性は高いのです。

この記事では、低賃金・低所得者(便宜上「貧乏人」と呼びます。ちなみに私も貧乏人です。)に何故保険が必要なのか、貧乏人にはどのような保険が適しているのかについて書きます。

保険とはなにか

保険商品には、大きくわけて3つの種類があります。ちなみに本稿では分かりやすさを重視しているため、必ずしも正確ではない記述があることをご承知おきください。

1つめは、人の生命に関する保険です。一般的には生命保険と呼ばれるもので、死んだら保険金が支払われる商品が代表例です。保険業界では「第一分野」と呼ばれます。

2つめは、事故による損害に関する保険です。自動車事故に遭ったら保険金が支払われるもの、家の火災が起きたら保険金が支払われるもの等がこれに当たります。保険業界では「第二分野」と呼ばれます。

3つ目は、第一分野と第二分野に含まれない、人の健康の中でも、必ずしも生死に関しない損害に関する保険です。病気やガンになったら保険金が支払われるもの、要介護の状態になったら保険金が支払われるもの等があります。保険業界では「第三分野」と呼ばれます。

それぞれの保険商品が持つ意味・果たす役割は異なりますが、いずれの保険にも共通して言えることは、保険とは「偶発的な事故に備えるためのもの」ということです。

死亡や火災や病気やガンなどのイベントは、起こるかもしれませんし、起こらないかもしれません。ただひとつ確実に言えるのは、いつ起こるのか・誰に起こるのかを予測することは不可能だということです。

このように「起こるか起こらないか予測できないこと」を、金融分野では「リスク(不確実性)」と呼びます。保険には様々な種類がありますが、「リスクに備えるためのものである」ということは、すべての保険について共通して言えることです。

貧乏人にとってのリスク

さて、私の今の年収は300万円程度です。今のご時世だとひょっとしたら恵まれている部類なのかもしれません。しかし家計は毎月カツカツですし、貯金をする余裕はあまりありません。したがって貯金はありません。配偶者も私と同じくらいの年収で、2人で働いてどうにかこうにか食いつなぎ、子どもを養ってという感じです。

私のような貧乏人にとって、先に述べたようなリスクは即致命傷となります。たとえば私が死亡した場合、家計における収入は半減しますので、遺された家族、配偶者と子どもの生活は即破綻します。

いや、死亡すればまだマシなほうで、たとえばガンになって療養しなければならなくなった場合、収入が無くなるだけでなく、新たに医療費の負担が発生します。「ガンになったら黙って死ね」というのは1つの正解かもしれません。しかし、本人や家族の心情的に「さっさと死ね」と割り切るのはなかなか難しく、さりとて金が無いのはどうしようもなく、ズルズル破滅に向かうことになるでしょう。

数百万でも貯金があれば、不測の事態が起こっても、貯金を取り崩しながら生活を建て直すことができるかもしれません。しかし私たちのような貧乏人には貯金が無い、貯金をする余裕も無いのです。ではどうすればいいのか? と考えた時に、保険の出番がやってきます。

保険用語の説明

ここからはいくつか保険用語を使いますので、あらかじめ簡単に説明しておきます。

保険事故: 保険金を支払う原因となるイベントのことです。死亡、火災、ガンや病気に罹患すること等があります。

保険者: 保険事故が起こった際、保険金を支払う人のことです。一般的には保険会社・共済組合等がこれに当たります。

契約者: 保険者と契約して、保険料を支払う人のことです。

被保険者: 保険の対象となる人のことです。通常は、被保険者が保険事故に遭った時に保険金が支払われます。

受取人: 被保険者が保険事故に遭った時に、保険者から保険金を受け取る人のことです。

貧乏人におすすめの保険プラン

その1 掛け捨て型

さてここからは、貧乏人にオススメの保険商品のタイプについて紹介していきたいと思います。

保険商品には、定額か変額か、円建てか外貨建てか、積立型か掛け捨て型か、定期か終身かなど、様々なタイプがあります。金があれば選択肢もあろうものなのですが、私たちのような貧乏人にとって、選択肢は多くはありません。

まず定額/変額と円建て/外貨建てについてですが、これは貧乏人が心配することではありません。一応申し上げておくと、変額・外貨建ては絶対に避けてください。これ以上は考える時間のムダなので省略します。

次に、積立型/掛け捨て型についてですが、貧乏人は掛け捨て型一択です。掛け捨て型の保険について「もったいない」と言う人もいます。たしかに掛け捨て型の保険には資産を形成する効果は一切ありませんので、「もったいない」という指摘はあながち間違いとは言い切れません。

ただ、それを言うなら賃貸住宅の家賃だって「もったいない」という話になるわけです。だからといってじゃあ直ぐにマイホームを買おうという話になりますか? なりませんよね? なんとなくお分かりいただけましたでしょうか。貧乏人は掛け捨て型一択です。

その2 定期保険

次に定期/終身ですが、これも定期保険一択です。何故なら定期保険のほうが保険料が安いからです。

終身保険の場合、保険会社は被保険者が死ぬまでの長きにわたってリスクを負担することになります。要するに保険会社が死ぬまで面倒をみてくれるわけですが、その分保険料は高くなります。

定期保険の場合、保険会社は決められた期間だけリスクを負担することになります。面倒をみてくれる期間が限られる分、保険料は安くなります。

保険会社に死ぬまで面倒をみてもらいたいのは山々ではありますが、私たちのような貧乏人にはその対価を支払う金がありません。ということで、貧乏人は定期保険一択です。

さて、定期保険を契約する場合、保険期間は何年くらいがいいのでしょうか? 先程と同じ理屈で、保険期間が短くなればなるほど保険料は安くなりますので、つまり保険期間は短ければ短いほどいいです。定期保険の保険期間は10年~という保険会社が多いですが、そういった保険商品は選択肢から外すことになります。

その3 余計な特約をつけない

保険商品には様々な「特約」を付けることができます。特約を付けると、主契約に追加の保障を加えることができます。しかし当然ながら、その分の保険料は上がることが多いです。

特約には「必要な特約」と「不要な特約」があります。最近の保険ですと、保険期間中に健康で生存していた場合、何年か毎に10万だか20万だかのお祝い金をくれる特約(生存給付金特約)が流行っています。これは私たちのような貧乏人にとっては「不要な特約」の代表例で、ムダな保険料の払い損、完全にムダです。保険のセールスマンは「健康長寿のボーナスですよ」とかテキトーなことを言ってこの特約をすすめてきますが、貧乏人として騙されてはいけません。

もちろん「必要な特約」もありますし、中には保険料の上がらない特約もありますので、一概に「特約は全部ムダ」とは言いません。ただ、私たちのような貧乏人には、ムダな特約に金を払う余裕はありません。主契約に特約をつける場合には、その特約・その保障は本当に必要なのか、保険料とのバランスを慎重に検討するべきです。

その4 死亡保障は年収1年分

私たちはいつ死ぬか、病気になるか、ガンになるか分からない、複数のリスクを抱えています。「すべてのリスクにしっかり備えたい」と思うのが人情ですが、いかんせん私たちは貧乏人なので金がありません。

「すべてのリスクにしっかり備える」ためには相応の保険料が必要になりますが、私たちのような貧乏人にそれを支払うことは不可能です。よって、「最低限の保険料で最低限の保障を備える」という発想が必要になります。

さて、私たちのような貧乏人にとって「最低限の保障とは何か」について考えてみましょう。

死亡はどうしようもないですが、遺された家族が1年くらい生活を維持できる、そしてその間に生活を再建できる程度のお金、つまり自分の年収より少し多い程度の保険金があれば十分だと思います。「その程度の金しか残さず死ぬのか」と、薄情に思われる方もいるかもしれませんが、むしろ1年分のお金を残して死ぬことは、私たちのような貧乏人にとってのベストエフォートであると言えます。

その5 ガン>医療

次に病気・ガンへの保障についてです。もはや手がつけられない重症の場合には死ぬこともやむを得ませんが、なるべくなら治療して生存したいのが人情です。

医療保険とガン保険を検討する場合には、まずガン保険を優先することをおすすめします。何故なら、医療保険が想定する病気に罹る確率より、ガンになる確率のほうが遥かに高いからです。今では3人に1人くらいはガンになるらしいので、まずガンに備えるほうがいいです。まずガン保険を検討して、余ったお金で医療保険を検討しましょう。

ガン保険については、前言を翻して、特約を厚めに付けることをおすすめします。特に先進医療特約は、あれば必ず付けて下さい。

先進医療を受ければ、ガンが治ることはよくあります。しかし、特約無しで先進医療を受けようとすると、数百万円以上の実費負担が発生する場合があります。私たちのような貧乏人が、数百万円という大金を一度に支払えるはずがありません。しかし、先進医療を受けられなかったために死んだ、ではシャレになりません。そのため、先進医療特約だけは押さえてほしいと思います。

医療保険・ガン保険を契約する場合には、通院・入院保障が重複しないよう注意しましょう。また、医療保険にガン治療特約が付いてくる場合もあるので、その際も保障が重複しないよう注意が必要です。

貧乏人におすすめの共済保険

さて、ここまで読んでいただいた貧乏人の方の中には、「そんな都合のいい保険商品が世の中にあるのか?」と疑問にお思いの方もいらっしゃるかもしれません。あるんです。共済保険です。

共済保険には、全国共済や都道府県民共済、JA共済やこくみん共済など、いくつかの会社の商品がありますが、いずれも上で述べた条件をすべて満たしています。

まずその1、積立型/掛け捨て型かについてですが、共済保険は掛け捨て型です。そのため保険料(共済保険では「掛金」といいます)は割安になっています。

次にその2、定期/終身についてです。共済保険は概ね1年間の定期保険です。そのため、ここでも保険料は割安になっています。1年間の定期保険ですが、掛金さえ払っていれば毎年自動で更新されますので、「気づいたら保険が切れていた」という事態にはなりません。

次にその3、特約についてです。共済保険にも様々な特約を付けることはできますが、民間の保険会社と比較すると気の利いた(余計な)特約はほとんどありませんので、この点は心配しなくてもいいと思います。

共済保険の場合、主契約の保障内容はペラペラなので、むしろ特約を積極的に利用しないと、肝心なところでまったく役に立たないということになりかねません。

次にその4・その5、保障についてです。わが家を例にして見てみましょう。私と配偶者は県民共済に加入していますが、一人あたり月5,000円の掛金(2人で月10,000円)で、最低限の死亡保障、病気やガンの入院・通院保障と、先進医療を受けることができます。仮にどちらかが死んだとしても、1年くらいは今の生活を続けられますし、病気になったとしても保険金で治療を受けることができます。

私たちは貧乏人ですので、月10,000円の掛金というのは決して安くはないのですが、家計をやりくりすれば捻出できない金額ではありません。月10,000円で日々の安心を買うことができると思えば、決して高くはないと思っています。

加えて、共済保険は非営利で運営されているため、保険者である共済組合の利益部分は「割戻金」として契約者に還付されます。割戻金はその年の利益部分に応じて返ってくるため、年によってばらつきはありますが、支払った保険料の3~4割くらいは返ってきます。昨年は120,000円の保険料を支払ましたが、割戻金として40,000円弱が戻ってきました。

2023/8/6追記: 2022年度の割戻金は約18,000円でした。

2024/7/3追記: 2023年度の割戻金は約36,000円でした。

共済保険については、各組合の商品内容にはそれほど差はありませんので、好きなところを選べばいいと思います。最近はウェブでも申し込みができて、非常に便利です。

共済・県民共済の全国生協連

https://www.kyosai-cc.or.jp/

貧乏人こそ保険に入ろう

本稿のテーマが「貧乏人のための保険入門」ですので、なにかとしみったれた話にはなってしまいましたが、私たちのような貧乏人でもそれほどムリなく加入できる保険はあります。貧乏人には貯えが無いのが常道で、何かあった時には即座に深刻な事態に陥りがちです。だからこそ、貧乏人こそ保険に入るべきです。

健康に過ごせている時には「保険料なんてお金のムダ」とお思いになるかもしれませんが、いつ死ぬか、いつ病気になるかは誰にも分かりません。そして、私たちのような貧乏人にとって、突然の死や病気は、自分自身にとって、そして家族にとっても致命的なアクシデントになります。

私のような貧乏人のみなさまにおかれましては、早めにムリのない保険、たとえば共済保険に加入して、心安い生活を維持していってほしいと願います。

QooQ